1. 環境経営の推進
横浜ゴムが探る生物多様性保全への取り組み

横浜ゴムでは、事業活動が生物多様性に与える影響を確認するため、事業所周辺予備調査を開始しました。ここでは、2011年4月から6月にかけて実施した三重工場周辺地域の調査について紹介します。

横浜ゴムの生物多様性保全への取り組み

天然ゴムをはじめとする生物資源や金属・鉱物資源などの利用、生産拠点における取水・排水など、当社の事業活動は地域の生物多様性に影響を与えています。このような認識の下、長期的かつグローバルな視点から、自社の影響力の範囲内において生物多様性を保全するため、2010年度に「横浜ゴム生物多様性ガイドライン」を策定しました。また、同年から開始したのが、国内15カ所、海外15カ所の拠点での事業所周辺予備調査です。各事業所の周辺に豊かな自然がどれくらい存在しているかを確認し、豊かな自然が存在する地域に隣接する事業所を絞り込むというものです。絞り込んだ後は、周辺環境の生物多様性への影響を調査し、課題を明確化した上で、どのような保全活動が可能なのか、計画策定のための現地調査などを進めていきます。

横浜ゴム生物多様性ガイドラインについてはこちらをご覧ください。

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三重工場と生物多様性との関係

桧尻川中流

桧尻川中流

2010年6月に実施した予備調査で明らかになったことは、多くの工場が「流域の水」という生態系サービスから多大な恩恵を受けていること。特に三重工場は日本一の清流である宮川流域に立地することから、宮川流域の水循環(生態系の恵み)を生み出す生物多様性と深いかかわりがあることが分かりました。こういった経緯から、最初の環境調査を三重工場で実施することを決定しました。
三重工場の周辺を流れる宮川は、大台ケ原を通り伊勢湾に注ぐ、全長約90km、流域面積が920km2ある三重県最大の河川です。三重工場は宮川流域から地下水を取水し、宮川流域にある勢田川の支流、桧尻川へ排水しています。
桧尻川は、周辺住宅地の下水道が十分整備されておらず、生活排水の放水管が直接河川に出ている箇所があります。そのため、特に晴れた日中は、河川の表面に油膜が目立ち、白濁する水の様子が見られます。
三重工場では、工場排水処理施設の中に、油分ろ過装置を設置し、油膜センサーで油分がないことをモニタリングしながら、BODが平均1.1mg/ℓの水質を持つ排水を、桧尻川上流に毎日1時間あたり350トン放水しています。もし、放水を止めると、一般家庭からの生活排水濃度が高まって桧尻川上流で酸欠が生じてしまう恐れがあり、三重工場からの放水により水質保全に貢献していることが考えられます。

桧尻川に生息しているメダカ(桧尻川中流)

桧尻川に生息しているメダカ(桧尻川中流)

そこで、放水と桧尻川との関係性や、水源域としての宮川における生物相や希少種の生息状況を把握し、今後、地元の環境NPOや教育研究機関等と協働した、宮川流域の保全活動や希少生物保護活動の可能性を探るため、「宮川の生物相調査」を実施しました。

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宮川の生物相調査の結果

宮川中流での水生生物調査風景

宮川中流での水生生物調査風景

2011年6月に実施した調査では、5月末に接近した台風2号が大雨をもたらし河川が増水していたため、川の流れの中までは調査できませんでしたが、生物相のおおよその状況が把握できました。
桧尻川では、上流と中流域にメダカとボラの稚魚、ミナミヌマエビの生息が確認されました。水質では電気伝導度(EC)とCOD(化学的酸素要求量)を測定しましたが、上流・中流とも91μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル:電気の通りやすさを示す単位)でした。CODは上流が2.9mg/ℓ、下流が2.4mg/ℓ、BODは上流が1.6mg/ℓ、下流が1.1mg/ℓでした。一般的に河川ではBOD2mg/ℓ以下であれば、水産1級としてヤマメ等の魚がすめる水質基準に相当します。またECは100μS/cm以下であれば、汚染度は低いとみなされます。6月の調査では、台風後の増水や雨水による増水で水質汚濁の濃度が薄まっていることが考えられるため、8月に同様の調査を再度行う予定です。
宮川本川の調査では、中流域と下流域および河口域と湾域で、植物と鳥類、底生生物の調査を実施。中流域は磯河原と瀬と淵が連続し、河岸段丘に沿って森が残っています。6月の調査で確認した植生、鳥類、底生生物は次の表のとおりで、それぞれの場所に多様な生物が生息していることが分かりました。

群落 植物 鳥類 底生生物
中流域 ツルヨシ群落、カワラヨモギ群落 ツルヨシ、カワラヨモギ、ノイバラ、ヒメムカシヨモギ、メマツヨイグサ、ウツギなど アオサギ、イソシギ、トビ、セグロセキレイ、カワラヒワ、ハシボソガラス ヒゲナガカワトビケラ幼虫、シロタニガワカゲロウ幼虫、ダビドサナエ幼虫、オジロサナエ幼虫、ヒラタドロムシ幼虫、ミナミヌマエビ

ヒゲナガカワトビケラ
ヒゲナガカワトビケラ

下流域 ツルヨシ群落、オギ群落、フトイ群落 ツルヨシ、オギ、フトイ、ヤナギタデなど アオサギ、コサギ、ケリ、カワウ、コチドリ、ツバメ、ホオジロ オオアオイトトンボ幼虫、ノシメトンボ幼虫
河口域
(干潟)
ヨシ群落、フクド群落

ヨシとフクドの群落
ヨシとフクドの群落

ヨシ、ツルヨシ、フクド、ハマヒルガオ、ハマエンドウ、ハマダイコン、ハマサジ、ナガミノオニシバなど ダイサギ、アオサギ、カワウ、カルガモ、オオヨシキリ アシハラガニ、クロベンケイガニ

アシハラガニ
アシハラガニ

湾域
(砂浜)
ハマヒルガオ群落、コウボウムギ群落、チガヤ群落 ハマヒルガオ、コウボウムギ、チガヤ、コマツヨイグサなど トビ、セッカ、ヒバリ、ホオジロ

このほか、桧尻川流域の地域住民の方々へのヒアリングを実施しました。桧尻川への印象や過去の様子、希望について、桧尻川流域にお住まいの10名の方々に事前にアンケート用紙をお渡しし、後日、直接訪問してお話を伺うというものです。
結果は、現在の桧尻川の印象について「汚い」と思われる方が多くを占めました。昔の桧尻川については、約35年前まではオニヤンマやトノサマガエル、ゲンジボタルがいて生き物が豊富だったこと、約25年前あたりから汚くなってしまったことが分かりました。桧尻川への希望については、「ヘドロをとってほしい」、「透明な水の川になってほしい」、「子どもが遊べる川になってほしい」、「癒される川になってほしい」などのご意見が寄せられました。

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今後の調査のロードマップ

2011年度の調査は宮川と桧尻川を中心に、夏と秋の実施を予定しています。桧尻川については、排水先の水質と生物相状況を把握した上で、水質・水生生物保全の可能性を探ります。宮川については中流から下流、および河口域と湾域で生物相の継続調査を行い、どのように生物相を保全していくか、その実施方法などを検討していきます。
2012年度には、海外拠点2カ所での調査を予定。社会からゆるぎない信頼を得ている地球貢献企業となるために、今後も積極的な活動を進めていきたいと考えています。

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