役に立つ基礎知識 Useful basic knowledge Back Number
第13回
接着についての基礎知識(第8回)
―「横浜ゴムの接着事業」―

これまで7回のシリーズに分けて、接着に纏わる様々なお話を紹介してまいりました。
第1回目の「接着の理論」から始まり「接着の強さについて」との接着の理論から、「接着剤の分類と選択」「各産業分野別の具体的事例」、更に前回の第7回目では「接着剤に纏わる法律」について御紹介してまいりました。

この他にも「接着に纏わるお話」は、まだまだたくさん有りますが、今回は「横浜ゴムの接着事業」として扱っているものの御紹介をしてみたいと思います。

1 ハマタイト事業の沿革と概要

ハマタイト(HAMATITE)は、横浜ゴムが製造・販売する接着剤・シーリング材(シール材、シーラント)・コーティング剤の総称です。
1958年にゴム系及び樹脂系接着剤の製造を開始。1963年にわが国で初めて建築用弾性シーリング材として、ポリサルファイド系シーリング材を国産化して以来、弾性シーリング材のパイオニアとして建築技術の発展に寄与するとともに、トップブランドとして成長し続けています。
更に、接着剤についても、建築用、自動車用、工業用などの幅広い市場に提供されています。
また、ハマタイト事業部は環境に優しい製品を目指してシーリング材の無溶剤化推進、産廃対策容器の開発に積極的に取り組んでいます。
2 ハマタイトの接着技術と製品群

コアー技術の一つと言えるのが、液状ポリマーに揺変性(垂れ、糸引き等の制御、チクソ性)を付与し、それを硬化させる触媒、或いは潜在性硬化剤(ある化学的刺激により、硬化剤としての活性を発現する)の技術により固まらせ(多くはゴム状弾性体へ)、ある部分への接着を行わせ(自己接着orプライマーにより)、接着、気密、防水、外力や熱による変形への追従性の付与などの機能を発現させるものです。これらの技術により、建築、土木、住宅、自動車、その他工業用にさまざまな製品を取り揃えています。

図

対象分野 ハマタイト商品グループ
建築分野 2成分型シーリング材各種
1成分型シーリング材各種
屋上屋根防水材
自動車分野 ガラスダイレクトグレージング
ランプシールホットメルト
ブレーキ用接着剤
住宅分野 外壁シーリング材、弾性接着剤
複層ガラスシール材
その他 コンクリート裏面処理剤
各種鋼板用接着剤、
光ファイバーコーティング
3 各産業分野別
建築用製品:ビル用途
近年のビル、特に高層ビルなどでは、カーテンウォール工法と呼ばれる工法で建てられるようになってきました。これは、鉄骨に工場などで作られた外壁を、カーテンを取り付けるようにして取り付けて建設していくものです。従って基本的には、この外壁パネルの周囲を、弾性をもったシール材(弾性:外壁パネルの熱伸縮、風圧などの動きに追従するため)を充填することにより、建物の水密、気密性が達成されます。
外壁パネルには様々なものがあり、又建物もコンクリート造り(RC造り)のものなどがありますので、シーリング材も様々な種類が適材適所の考え方により、適用されます。又ガラス窓廻りなども、重要な箇所です。その他、屋上も防水材などが施工されます。
図

ビルディング用2成分形シーリング材の主な種類と特徴
種 類 製品名 各種類の主な特徴
(長所・短所)
主な使用部位
2成分形
シリコーン
シリコーン70 耐候性・耐久性に優れる
耐熱・耐久性に優れる
仕上材・塗料が付着しない
目地周辺部を汚染することがある
金属カーテンウォール
がラス廻り
2成分形
変性シリコーン
スーパーII 耐候性・耐久性が良好
耐熱・耐寒性が良好
低温時の硬化性が良好で強度の発現が早い
表面に多少のベタツキ感が残る
PCaカーテンウォール
各種外層パネル
さいでぃんクン 低モジュラスで応力緩和性が大きい
耐候性・耐久性が良好
窯業系サイディングボード
2成分形
ポリサルファイド
SC−M500 耐水性・耐酸性・耐老化性に優れる
耐油性・耐溶剤性に優れる
美観性に優れる(仕上りが美しい)
PCaカーテンウォール
RC造各種目地
2成分形
ポリウレタン
UH−01NB 耐疲労性が良好
塗装性が良好
耐候性はやや劣る
表面にベタツキ感が残る
RC造各種目地
1成分形
ポリウレタン
SEAL21
2成分形
ポリイソブチレン
マイレックス-Z 耐候性・耐久性に優れる
ガラス接着性に優れる
非汚染性が良好
塗装性が良好
ガラスカーテンウォール目地
金属パネル間目地

2成分形シーリング材の容器写真
建築用製品:戸建住宅用途
住宅の外壁も近年ではサイディングボードが増えてきましたが、このボード間の目地も、弾性シール材が充填されます。ビルの場合と異なり、一成分形のシーリング材が主に用いられます。
その他、屋根材やタイルを接着するために、弾性接着剤も用いられるようになってきました。
床用弾性接着剤は、室内に施工されることから、特に昨今問題とされる揮発化学物質の観点から特に、低VOC対策を行ったものを用意しております。また、窓廻りに関しても、省エネなどの観点から、複層ガラス、断熱サッシが増えてまいりましたが、これらのシール材、断熱材用接着剤も長年市場に提供してまいりました。

戸建住宅に使用されている各種製品
戸建住宅に使用されている各種製品

住宅用1成分形シーリング材の主な種類と特徴
種 類 製品名 主な特徴 用途
1成分形
シリコーン
SS−310 耐候性・耐久性に優れる
耐熱・耐久性に優れる
仕上材・塗料が付着しない
目地周辺部が汚れることがある
ガラス廻り
1成分形
変性シリコーン
スーパーI 耐候性・耐久性が良好
耐熱・耐寒性が良好
塗装性が良好
表面にタックが多少残る
サイディング用
工業用、車輌用
スーパーI LM 耐候性・耐久性が良好
耐熱・耐寒性が良好
塗装性が良好
表面にタックが多少残る
サイディング
プレハブ住宅
1成分形
ポリウレタン
シールエース 耐疲労性・塗装性に優れる
経済性に優れる
耐候性はやや劣る
表面にタックが多少残る
ALC板用
防水材端末処理
1成分形
ポリサルファイド
PS−ONE 耐候性に優れ、表面がきれい
初期硬化が若干劣る
室内間仕切り
防水材端末処理
自動車用製品
自動車のボディーと窓ガラスを直接接着させる、ダイレクトグレージング(一液形ウレタン弾性シーラント)は、自動車の空気抵抗、デザイン性、衝突安全性に大きく貢献してまいりました。
その他各種接着剤の例を以下に御紹介します。

自動車に使用されている各種製品
自動車に使用されている各種製品
4 最後に

長い期間に渡りお付き合いいただきました本シリーズも、今回で最終回とさせていただきます。
本シリーズは、接着とは?といったお話から始めさせていただき、一部の箇所では、かなり具体的な知識にまで踏み込んでまいりました。分かりやすく、又なるべく多くの方々に、なるべくお役に立つお話を といった気持ちで書いてまいりましたが、ご不満に感じられることも多々あったかと思います。最後に本シリーズに辺り、参考、一部抜粋等をさせていただきました成書を以下に御紹介いたしますので、至らぬ部分につきましては御参照いただき、ご容赦していただきたくお願い申し上げます。
又、次のシリーズとして始まります“複合材料”につきましても、宜しくお願い申し上げます。
文責:木村 和資
横浜ゴム(株)接着技術研究室 室長
日本接着学会副編集長
【参考資料】
1.『初心者のための接着技術』日本接着学会
2.『接着と接着剤』日本規格協会
3.『接着のおはなし』日本規格協会
4.『接着剤読本』 日本接着工業会
5.『接着の科学』講談社ブルーバックス
6.『高性能を生む接着剤えらび』技術評論社
7.『接着のはなし』日刊工業新聞社
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