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第14回
複合材料の基礎知識(第1回)複合材料の紹介

複合材料に纏わる話を今後5回にわたり進めていきたいと思います。
今回は、第1回として「複合材料の紹介」をさせていただきます。続いて第2回「強化繊維の紹介」、第3回「マトリックス樹脂の紹介」、第4回「ものづくりの実際」、第5回「航空・宇宙・車両・艦船分野での適用例」の順に進めてまいります予定ですので、よろしくお願いいたします。

1 複合材料とは

複合材料という用語はcomposite materialを和訳したもので、強化材と母材という二種類以上の素材を組み合わせて作られた材料のことをいいます。FRPあるいはコンポジットともいいますが、何れも複合材料のことをいっています。複合材料の一種にFRPがあり、FRPはFiber Reinforced Plastic(繊維強化プラスチックス)を意味します。その中でも炭素繊維とエポキシ樹脂の複合材料であるCFRPは、軽量で高強度な材料として航空機の翼、外板、人工衛星の反射鏡、ロケットの胴体等の航空宇宙分野、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスラケット等のスポーツ分野、あるいは橋梁、柱の補強、ロボットアーム等の一般産業分野で広く使用されています。
複合材料は二種類以上の素材から作られますが、強化材(reinforcing element)と母材(composite matrix)から構成されます。強化材は読んで字の如く、複合材料を強化する素材のことであり、代表的なものとしては炭素繊維、ガラス繊維等があります。炭素繊維はとても強い素材であり、1平方ミリメートルの炭素繊維一束で体長2.5メートルのヒグマ(約300kg)を支えることができます。又、炭素繊維の密度は1.77g/cm3ですから軽くて強い材料ということができます。軽くて強い材料ということを表す単位に引張強度を密度で割った値(比強度)があります。高張力鋼や超々ジュラルミンと汎用の炭素繊維を比強度で比べてみましょう。表1の様になります。金属材料に比べて一桁大きい比強度であることが判ります。

材料名 密度(g/cm3) 引張強度(MPa) 比強度(m)
汎用炭素繊維 1.77 3530 203,505
高張力鋼(HT80) 7.8 865 11,316
超々ジュラルミン(A7075) 2.8 573 20,882
表1 炭素繊維と高張力鋼の比較

上述のように軽くて強い炭素繊維ですが、強化材だけで重いものをつるすことはできますが、強化材だけでは圧縮、曲げ、ねじり等の荷重に耐えることはできません。強化材を強化材の周囲で強化材を保持する素材が必要であり、それを母材といいます。
図1をご参照ください。母材の音読みである『ぼざい』を使うより『マトリックス』と言うほうが多く、「マトリックスはエポキシ樹脂を使用しています」等と会話します。FRPの場合、エポキシ樹脂の他のマトリックスとしては、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化樹脂、あるいはPEEK、PPS等の熱可塑樹脂があります。


先程、炭素繊維と金属材料の引張強度を比較しましたが、複合材料としては強化材と母材で構成されるものですから、複合材料としての強度を考えてみましょう。
複合材料の引張強度は強化材と母材の混合比率から複合則で算出することができます。複合則とは次の様に表します。
σL=σf・Vf + σm(1-Vf) (1)
ここで、σL:複合材料の繊維方向引張強度、σf:繊維引張強度、σm:マトリックス引張強度、Vf:繊維体積含有率を表します。
例題として、炭素繊維とエポキシ樹脂がそれぞれ容積比で60%、40%含有している一方向CFRP板の引張強度を求めてみましょう。
σf=3530MPa,σm=980MPa, Vf=0.6を(1)式に代入して
σL=3530MPa・06 + 980MPa・(1-0.6)=2510 MPaを求めることができます。
航空宇宙機器、産業機械、スポーツ器具で用いられているのは±45°、90°、0°の積層構成ですので、実際の積層構成に基づく試験片を作成し、力学的特性を求め設計に供しています。
また、密度も複合則に従いますので次の式を得ることができます。
ρcomp=ρf・Vf + ρm(1-Vf) (2)
ここで、ρcomp:複合材料の密度、ρf:繊維の密度、ρm:マトリックスの密度、Vf:繊維体積含有率を表します。
例題として、炭素繊維とエポキシ樹脂がそれぞれ容積比で60%、40%含有している一方向CFRP板の引張強度を求めてみましょう。
ρf =1.77g/cm3, ρm =1.2g/cm3, Vf=0.6を(1)式に代入して
ρcomp=1.77g/cm3・06 + 1.2・(1-0.6)≒1.5 g/cm3を求めることができます。

材料名 密度(g/cm3 引張強度(MPa) 比強度(m)
一方向CFRP (Vf:0.6) 1.5 2510 170,748
2 複合材料の種類と特徴

複合材料はFRPだけではありません。エンジン部品にはチタニウムやセラミックスをマトリックスに使用する複合材料があります。以下にマトリックスにより区分した複合材料の種類と特徴を説明します。また、繊維強化という用語も用いられていますので、繊維強化複合材料の表現も併記します。
1) PMC(Polymer Matrix Composite 高分子基複合材料)
マトリックスがエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の高分子(ポリマー polymer)である複合材料をPMCと呼びます。繊維強化プラスチック(FRP Fiber Reinforced Plastic)のことであり、ガラス短繊維に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させたGFRPはプレジャーボート、ユニットバス等に使用され、これがPMCのルーツといえます。1950年代は短繊維GFRPが主流であり、力学的特性は現在のCFRPに比べはるかに低いものでした。1970年代後半、連続長繊維にエポキシ樹脂を含浸したプリプレグはその高い力学的特性により、航空機に使用されるようになりました。更には炭素繊維、アラミド繊維の出現により航空機の主構造に使用されるようになり、現在、先進複合材料といえばPMCを指すようになりました。
プリプレグは繊維にエポキシ樹脂等を含浸したものであり、繊維と樹脂の組み合わせにより様々なものを製造することができます。図2に横浜ゴムで製造しているプリプレグを示します。


図2 プリプレグ・マップ
図2 プリプレグ・マップ
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縦軸はマトリックスを、横軸は強化繊維を表し、交点がプリプレグを表します。マトリックスはポリマーですので、耐熱温度は約300℃に制限されますが、自己消化性、難燃性、高靭性、自己接着性等の特性を持たせることにより航空・宇宙分野の目的に合った材料にすることができます。
PMCはプリプレグだけから製造されるものではありません。室温で硬化する不飽和ポリエステル樹脂を直接、ガラス繊維に含浸したり、スプレーで含浸することもできます。このようなウェットレイアップ法、スプレーアップ法の他、空気循環式オーブン、真空ポンプを用いるオーブン硬化法、熱プレス法、フィラメントワインディング法等種々の成形方法を用いることもでき、複合材料の中では最も商業化が進んでいます。
以下に、PMCの実用例を図示します。

図3 PMC実用例
図3 PMC実用例

2) MMC(Metal Matrix Composite 金属基複合材料)
マトリックスがアルミニウム、チタニウム、銅などの金属である複合材料をMMCと呼びます。繊維強化金属(FRM Fiber Reinforced Metal)のことであり、1959年に発表された鋳造法により複合化した銅のタングステン線による強化が始まりとされています。その後、ボロン繊維強化アルミマトリックス、炭化ケイ素繊維チタニウムマトリックスが米国を中心に欧州・日本などで研究開発が推進されています。
金属はポリマーやセラミックスに比べて、高い塑性変形能、靭性、熱伝導性、電気伝導性を有しています。しかし、軽量性ではポリマーに、熱性ではセラミックスに劣り約800℃です。そのなかで成形が容易なアルミニウム基MMCはゴルフヘッド、自動車エンジンのシリンダー等に使用されています。
チタニウム基MMCは、米国においてのジェットエンジンの一部にMMCを適用し、特定部位の強度・剛性を向上させることができ、CF6のファン・フレーム・シャフト、或いはF119アクチュエータ・ピストンに使用されています。図4参照。

図4 MMCのエンジン部品的用例
図4 MMCのエンジン部品的用例

3) CMC(Ceramics Matrix Composite セラミックス基複合材料)
CMCは高温材料であるセラミックスに強化相としてセラミックスを複合化したものであり、単体セラミックスには無い優れた特性を引き出すことをねらった材料です。強化相としてはセラミックス粒子、ウィスカ、短繊維、連続長繊維があります。
セラミックスの定義は広く、陶器や磁器類を含む場合もありますが、ここでは工業的に高純度化され製造されるファインセラミックスあるいはエンジアニングセラミックスと呼ばれるものを指します。
セラミックスは約1000℃級の耐熱性がありますが、脆く、破壊形態もカタストロフィックであり、破断歪は小さい本質的な欠点があります。それを繊維強化することで破断歪を飛躍的に向上することができます。セラミックス長繊維で破壊靭性を高めた炭化ケイ素繊維/炭化ケイ素マトリックス複合材(SiC/SiC)は、耐熱1100~1200℃材料であり、タービン部品への適用が評価されています。図5に示すアフターバーナーフラップはエンジン試験を終え、実用フェイズに入っています。

図5 CMCの部品的用例
図5 CMCの部品的用例

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